安田先生から学ぶこれからの子育て
お子さんの将来を 支えてくれるものは「何」?
今だけを考えない
安田教育研究所を設立して25年になります。出版社時代の後半15年も教育書籍・受験情報誌の編集にあたっていましたから、現在のような仕事を始めてかれこれ40年になります。最近つとに感じていることは、教育が次の段階への準備教育になっているということです。中学に入るための長期の塾通い、高校に入るための高い内申点を目指しての日々、大学受験に向けての文理コース分け、大学では就職のために2年からインターンシップ参加……『入試』を介して日本の学校が次の段階のための準備教育になっています。そのため当然保護者の意識も次のステップに向かい、それが何より大事になります。こうしたことの繰り返しで膨大な時間と労力を消費しているのが現実です。
保護者と接していても、以前はもう少しのんびりしていたというか、ゆるかった印象です。勉強以外の思いっきり遊ぶこと、社会とかかわること、いろいろな人と接することなどをもっとさせていました。目の前の壁が低かったのかもしれません。が、こうした経験の乏しさが欲求不満につながり、心が今一つ安定しないこと、さらには非認知能力(協調性、意欲、忍耐力、共感力いった数値化できない内面的なスキル)が育たないことにつながっているのではないかと考えています。
非認知能力こそAI時代を生き抜いていく上で必要とされる“力”です。冒頭の灘中の入試問題も、学校が生徒に非認知能力を付けたいと願っているからでしょう。私立中学を受験してくる恵まれた環境で育ってきた児童にこそ、世界には厳しい環境下で生きている子どもたちがいることを知り、世界の課題について他人ごとでなく自分には何ができるか考えるきっかけにしてほしいと願っているのだと考えます。
皆さんのお子さんはゲタを履いて育っているのです。一方、日本にも最初からゲタを履けない子がたくさんいます。自分や自分の周囲の人だけでなく、さまざまな境遇の下で生きている人がいる社会にも目を向ける子育てをしていただきたいと思います。そしてそうした育て方がお子さんの“社会性”“人間性”を作り、お子さんを人からリスペクトされる存在にしていくのです。
どうしても今は目の前の中学受験で頭がいっぱいで、お子さんの学力を高めること、家族のことだけに関心が行っていると思います。受験生活は、目の前の塾のクラスの昇降、模擬試験での偏差値といったことばかりが気になる日々になりがちです。そうだからこそ上記のことを意識して生活していただきたいと思います。
これからお子さんの人生を支えてくれるのは、学力はもちろん必須ですが、これまで述べてきたように“社会性”“人間性”です。いろんなことがAIにとって代わられる時代になるからこそ、これまで以上にそれらが重要になると意識してください。
私が編集者時代にインタビューしたバレエの森下洋子さんがこんなことを言っていたことを思い出しました。
「次の発表会のために練習する子は大成しない」