少子化でも受験率は安定
親の価値観、子どもとの相性で ぶれない学校選びを
神奈川は、冒頭で述べたように受験者数が減少していますが、共学校にその影響が強くあらわれました。男子校や女子校には一定層のファンがついているため、そうしたコア層を持たない共学校の方が人口動態に左右された可能性があります。
男子校で減少幅が割に大きかったのは聖光学院と逗子開成、共学校で減り方が大きかったのは関東学院です。関東学院は前年度の大幅増に対する反動と見ています。逗子開成はサレジオ学院との間でシーソーのように増減を繰り返しており、今年は減る年でしたが、その減り方がやや大きいため、東京の攻玉社に流れた可能性があります。
神奈川は、東京と同じ2月1日に入試初日を迎えるため、東京の近くに立地している学校は、どうしても東京の学校に引きずられる傾向があります。その意味では、栄光学園や今春開校する鎌倉国際文理などの“ディープ神奈川”の学校はそれなりに受験生を集めました。また、特に桐蔭学園・桐光学園の増加が鮮明でした。
女子校に関しては、フェリス女学院が日程を変えなかったため受験生が増え、横浜雙葉は日程を変えなかったため2日は受験者が減り、横浜共立学園は2日に日程を変えたために増えたといった、三者三様の動きはありましたが、蓋を開けてみれば倍率は変わっておらず、昨年とほぼ同じような入試になりました。
大学入試改革を受けて
入試問題の出題も変化
入試問題の出題傾向にもやや新しい流れが出てきています。たとえば国語では、かつて名作と呼ばれたような小説や論説文、随筆などの出題が少なくなり、代わりに最近になって脚光を浴びるようになった新進作家の文章が出題されることが増えてきました。ここ5年くらいで特にその傾向を強く感じるようになりました。
出題型式は、大学入学共通テストの影響を強く受けています。たとえば1つの大問のなかに2つの文種の違う文章が提示されるような出題型式です。大学入試では慶應義塾湘南藤沢などがそうした出題の仕方をしていましたが、中学入試でも物語文と説明文を同時に提示したり、物語文のなかに説明文を挟み込んだりといった、文種が異なる文章を両方読ませて答えさせる問題が目立ってきました。
理科や社会に関しては、従来通り時事問題が一定数を占めており、今起こっていることに対する関心を持ってもらいたいという意図が見受けられます。昨今の情勢から社会では戦争に関連した話題が出題されることも予想されていましたが、実際には社会では出題されず、国語でよく出題されていました。これも受験生に現代の社会情勢について考えてもらいたいという思いからなのだと思います。
このほか数学ではとくに男子校で立体図形の出題が増えており、それが難化感を醸し出している部分があります。ちなみに今年の開成は最初に難しい問題を持ってきており、多くの受験生が戸惑ったと思われます。なお、教科を問わず、文章題の素材文が長くなる傾向は相変わらず続いており、共通テストの影響はここでも見られます。
一時期に比べれば、あまりに奇抜な入試は見なくなりましたが、多様な視点から入学者を選抜する方向へと舵を切った大学入試改革の影響なのか、新しいタイプの入試を導入する学校も出てきています。
たとえば順天堂大学系属理数インターでは、新タイプ入試として様々な入試方式を用意しています。その1つ「オピニオン入試」では、事前に与えられたテーマについてのプレゼンテーションを評価するものですが、入試当日に新しい課題が言い渡され、事前に考えてきた内容に落とし込んでプレゼンしなければなりません。
このように、ペーパーテストで測定できる学力とは違った能力を評価するような入試方式は、大きな潮流にはならないものの、子どもの多方面の能力を開花させるという意味では、歓迎すべき動きなのかもしれません。
医学部人気は依然高く
理工系、国際系も堅調
受験生や保護者の支持を集めた学校としては、今年度も医学部への進学実績が多い学校や、理工系大学の付属校、国際教育に力を入れている学校などが目立ちました。
医学部人気の高さを物語る例として真っ先に上げられるのが順天です。今春から北里大学の付属校になり、医学部への推薦入学制度もあるということで、大変な人気でした。その影響を受けたのが獨協です。獨協も獨協埼玉との2校で約10名という獨協医科大学への推薦枠があり、北里大学附属順天とは医学部を系列に有する大学付属同士ということで競合しました。
また、昨年度に順天堂大学医学部への系属校入試枠ができた順天堂大学系属理数インターも、初年度より認知度が上がり受験生が増えており、医学部への信頼感は根強いといえそうです。
理工系大学の付属校、たとえば芝浦工業大学附属、芝浦工業大学柏、工学院大学附属、東京電機大学、東京農業大学第一などの人気も手堅いものがあります。実際、都立高校でも工業系が見直されていますし、高専も見直されています。これは、単純な理数系人気というよりは、AI時代、ロボット時代を見据えた上でのSTEAM教育の重要性が保護者にも浸透してきているからだと思われます。