「自調自考」の精神を柱に 自ら考える教育を実践
国際人として活躍する力を育てる
6年間を見通す学習計画で
学びを可視化したシラバス
広野 シラバス(年間授業計画)を作成し、生徒に明示されたのも斬新な発想でした。
田村 最初はごく薄いシラバスからスタートしましたが、毎年リニューアルしていくなかで現在の形になりました。学習内容の意味や順序、その内容をどう発展させていくかなど、学びの全体像を理解したうえで授業を進めています。シラバスを導入した最大の目的は、6年間の学びを見通して生徒に提示すること。教員側も教える内容を6年間見通せます。双方に対してメリットがあり、先駆的で効果があったと思います。
広野 生徒は6年間のつながりを見ることで、ここでつまずくと後で困るということがわかります。学習を可視化する試みによって必要な学力がきちんと担保されるのはもちろん、授業での学びも深まると感じます。
田村 高校開校から3年後に中学校を開校するにあたって、高校の教科書と中学校の教科書を並べて検討しました。中高で重なる部分があったり、並べ替えたほうがつながりが良くなったりといった点が見えてきたことで、科目ごとに委員会を立ち上げて、6年間のカリキュラムを考えました。
さらに学年ごとのテーマを設定して、学校行事や研修旅行もテーマに沿って進めるようにしました。広島に研修に行く時期に、国語では平和教材を入れるという形でカリキュラムを組んでいます。各科目で6年間のチャートを作成しているので、ちょっとつまずいたとしても、「ここに戻ればいいのか」「今やっていることはここからつながっているんだ」ということがわかります。
広野 絶えず見直しをして、毎年刷新されているのも大事なことですね。
田村 授業ごとの着眼点も示していますし、生徒たちにもチェックさせるようにしています。
人としてのあり方を問う
学園長講話で養う倫理感
広野 倫理感を育てるという教育目標のベースになっているのが学園長による講話だと思います。日本の教育では軽視されがちな哲学に触れる機会にもなっているそうですね。
田村 中高6年間で30回受講する学園長講話は、生徒も楽しみにしている貴重な時間です。哲学的な要素が最終的に生きてくるのは大人になってからだと思いますが、それも教育の醍醐味だと考えています。講話の中身はいわゆるリベラルアーツで、人間としてのあり方や生き方に関しての問いかけです。生徒自身に考えさせる話でもあります。それは正しいのかどうか、倫理的な判断に迷うときに、講話で聞いた話が彼らのなかに少しでも残っていればいいと思っています。
広野 自らを知るという意味もあると思います。自分の好きなこと、得意なことを知る入り口になる可能性がありますね。
田村 生徒の反応は本当におもしろいです。年齢が上がるにつれ反応は変わりますし、同じ話でもそれぞれの生徒や聞くタイミングによって受け取り方に違いがあると感じます。
広野 6年間を通して、日頃の授業から離れて社会を見つめる、古典哲学と向き合う、そういう時間は非常に大事です。学校行事で現地集合・現地解散にこだわっているのも貴校の特徴ですね。
田村 生徒が自分で計画して自分で行うことは、教育目標を含めて本校に通底している考え方です。例えば、修学旅行は生徒自身がどういうことを学びたいかを考えて、企画立案から実行まで行います。そのスタートが現地集合で、長年こだわりを持って続けてきました。自分たちで考えた修学旅行だからこそ、見学態度も「ほかの学校の生徒とは違う」とよく言われます。
広野 先生に言われるままに見学するのと、自分で計画を立てて見学するのとでは見方も変わりますね。
田村 最近は携帯電話が普及したことでトラブルも少なくなりました。その一方で、いざとなれば携帯があると考える生徒が増えているのは心配です。先日は中3と高1で1週間、携帯から離れて生活するデジタルデトックス体験をやってみました。そういう取り組みが必要になってきているとも感じています。